置き配について考えてみた 中野区・杉並区の軽貨物会社ブログ
◆置き配時代の到来と軽貨物運送業の現場から考える課題
~はじめに~
2025年6月、国土交通省は標準運送約款の見直し案を提示し、これまでの「対面手渡し」が原則だった宅配の受け渡し方法を「置き配」が基本となる方向性を示しました。中野・杉並エリアで軽貨物運送業を営む私にとって、この変化は業界全体に大きなインパクトを与えるものです。本記事では、現場の視点から置き配のメリット・デメリット、そして今後の課題について考察します。
~置き配が推進される背景~
・人口減少と人手不足
日本は少子高齢化により、今後ますます人口が減少していきます。それに伴い、配達担当者の確保は年々難しくなっています。特に都市部では求人倍率が高く、配達員の確保が事業運営の大きな課題となっています。
・再配達問題
再配達は、配達員にとって大きな負担です。一度で荷物を届けられない場合、再度訪問する必要があり、単純に労力が増えるだけでなく、配達員のモチベーション低下や離職率の上昇にもつながっています。再配達に関する精神的な徒労感は、現場で実際に働く者にしか分からない大きなストレスです。
~置き配のメリット~
・業務効率の向上
置き配を導入することで、配達先での待機時間や不在による再訪問が減り、1日に配達できる件数が増加します。特に大手ECサイトでは、置き配が標準となっており、配達員1人あたり200個以上を配るケースも珍しくありません。
・顧客の利便性向上
受取人が在宅していなくても荷物を受け取れるため、顧客満足度も向上します。
~置き配のデメリットと現場の懸念~
・盗難・誤配リスクの増加
置き配により、荷物の盗難リスクが高まることは避けられません。特に都市部では、玄関先や集合住宅の共用スペースに置かれた荷物が盗まれるケースが増加しています。また、誤配に気付かず配達完了としてしまうリスクもあります。
・天候・商品特性への配慮
--雨天時の対応--
雨の日には荷物が濡れるリスクが高まります。防水対策が不十分な場合、商品が破損することもあります。
--食品や高価な品物の扱い--
生鮮食品や冷凍品、高価な商品、プライバシー性の高い荷物など、置き配に適さない商品も多く存在します。これらの取り扱いには一層の注意が必要です。
・物理的な問題
--大型・重量物の置き配--
玄関の中に運び込めない重たい荷物や、ドアを通らない大型商品など、物理的に置き配が困難なケースも少なくありません。こうした場合、現場での対応策が求められます。
~弊社の現状と考え方~
弊社の取引先クライアント様は、基本的に「お客様に直接手渡し」を原則としています。これはサービス品質の維持・向上を重視しているためであり、荷主様から明確な依頼があった場合のみ置き配を行っています。
・直接手渡しの価値
直接お客様に荷物をお渡しし、「ありがとう」と感謝の言葉をいただけることは、配達員にとって大きなやりがいとなります。単なる効率やコストだけでは測れない、人と人とのつながりがここにはあります。
・単価と労働価値
再配達は確かに手間がかかりますが、その分は配送料金や単価に反映されていると考えています。例えば、大手ECサイトの置き配メインの現場では日給制が多い一方、弊社クライアントの場合、200個配達した際の売上は約2倍になることもあります。どちらが良いかは人それぞれですが、直接手渡しの価値も無視できません。
~今後の課題と展望~
・盗難対策の強化
置き配が主流となることで、盗難リスクは間違いなく高まります。今後は防犯カメラの設置や、置き配専用のボックスの普及など、ハード・ソフト両面での対策が求められます。
・配達員の働き方改革
置き配による効率化は、配達員の負担軽減や労働環境の改善につながる可能性があります。しかし、現場の声を無視した一方的な制度変更は、かえってモチベーション低下やサービス品質の低下を招きかねません。現場の意見を取り入れた柔軟な運用が必要です。
・顧客とのコミュニケーション
置き配を希望しない顧客も一定数存在します。顧客のニーズに応じて、対面手渡しと置き配を柔軟に選択できる仕組みづくりが重要です。
~まとめ~
置き配は、今後の物流業界にとって避けては通れない大きな流れです。しかし、そのメリットだけでなく、現場で起こりうるさまざまなリスクや課題にも目を向ける必要があります。弊社では、今後も「サービス」と「品質」を大切にし、お客様一人ひとりに寄り添った配達を心がけていきたいと思います。 最終的にどのような結論になるかは分かりませんが、現場の声を大切にしながら、より良いサービスを追求していく所存です。
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